研究概要 |
充填スクッテルダイト化合物PrOs_4Sb_<12>はPr化合物初の重い電子超伝導体である。また、低温、高磁場には磁気誘起秩序相が存在し、その特異な物性に興味が持たれている。その特異な超伝導特性をミクロな観点から明らかにするために、PrOs_4Sb_<12>の粉末試料においてSb-NQR、単結晶試料において角度分解Sb-NMR(核磁気共鳴)測定を行っている。常伝導状態のSb-NMR測定をおこなったところ、非常に複雑なスペクトルを得た。この複雑なスペクトルの帰属を決めるために、角度分解実験を行い、数値計算によるシミュレーションを行うことで、Sb-24gサイトは結晶学的には等価であるが、四重極テンソル最大主軸の方向が異なる3つのサイトが存在するため、磁場中では合計で36本もの信号が観測されることを明らかにした。今回の実験で、複雑なSb-NMRスペクトルの帰属を決定し、四重極パラメータを明らかにした。この成果は、ドイツで行われた国際会議SCES2004にてポスターとして発表した(Physica B(2005),印刷中)。これをベースとして、現在、超伝導状態のナイトシフトの測定を行っている。これまでに、高温のナイトシフトから超微細相互作用定数を決定し、超伝導状態ではナイトシフトは温度によらず一定であることを見いだした。現在、これを確認すべく、追試を行っているところであるが、ナイトシフトが不変であるという実験事実は超伝導対パリティが奇であることを示唆している。これらの結果は2004年9月物理学会、2005年3月物理学会で口頭発表した。現在、NMR装置を応用した表面インピーダンス測定法を開発中であり、PrOs_4Sb_<12>に対し適用する予定である。
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