研究概要 |
充填スクッテルダイト超伝導体PrOs_4Sb_<12>は、Pr系で初めての重い電子超伝導体である。この物質の特筆すべき点は、(1)超伝導転移にともなって比熱の2段転移が観測され、熱伝導測定から超伝導多重相の存在が指摘されている。(2)ミュウ中間子実験では自発磁化の存在が観測されており、スピン3重項状態の可能性が指摘されている。(3)超伝導相が消失した後、磁場誘起秩反強四極子序相が現れ、Th対称性をもつ局在4f電子の結晶場が重要である。(4)反強四極子秩序相はこの系の重い電子超伝導対生成機構に関与していると考えられている。にまとめられるが、超伝導パリティをふくめ磁場誘起秩序相と超伝導機構の関係など重要な課題が残っている。 本研究では、特にこれまでに行われていない単結晶試料を用いた極低温(0.3ケルビン-15ケルビン)でのSb-NMR/NQR実験を行った。得られた結果は(1)磁場依存性・角度依存Sb-NMR実験から、Sb-NMRスペクトラムの帰属を精度良く決定し、電子スピン磁化率を評価する際の基礎データである電場勾配テンソルやナイトシフトに関する情報を得た。(2)バンド計算との比較から、これまで未知であった、Sbの核四極子モーメントを決定した。(3)精密なSb-NQR実験を行い、核四極子パラメータの低温での異常な温度依存性がTh対称性をもつPr-4f^2由来の16極子によるものであることをはじめて明らかにし、多極子自由度の存在と超伝導の関係を指摘した。(4)超伝導状態でナイトシフトの温度依存性が無いことから、スピン3重項超伝導状態であることを示唆する結果を得た。(1)〜(3)については公表済み。(4)については、現在執筆中である。また、これ以外に、(5)(Ba,Sr)Fe4Sb12のNQR/NMR実験から強磁性スピン揺らぎに関する知見を得た。(6)重い電子超伝導準粒子磁化率評価に関して、比熱や緩和時間からスピン磁化率を評価できることを示した。
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