研究概要 |
本研究では,定常強磁場,極低温,高圧,局所の複合した極限環境下における,低次元有機伝導体のゆらぎ,特に低温における量子ゆらぎが影響する臨界相転移現象の解明と,新奇電子状態,相転移の探索を行うことを目的としている.本年度は,複合極限環境の整備として,(I)東北大学金属材料研究所強磁場超伝導材料研究センター設置の定常強磁場発生装置(ハイブリットマグネット),ヘリウム3冷凍機,2軸回転機構使用による30T,0.5Kの強磁場低温環境に加えて,ダイヤモンドアンビルセルを使用した10GPaの高圧環境における輸送特性測定環境の構築を行った.また,(II)超伝導状態,磁束状態において,量子ゆらぎが関与する量子磁束液体状態と抵抗転移曲線との相関を,クランプ式圧力セルを用いた低圧印加(1GPa以下)により物質パラメーターを変化させて系統的に調査した.モット転移などの相転移に伴う不均一や電荷秩序とその融解状態など,均一な系における種々の電子的「不均一」状態が存在する.このような状態を実空間情報として得るためには異なる長さスケールの分解能,走査領域を有する局所測定プローブが必要である.我々のグループでは,(III)マイクロメータースケールのプローブとして放射光赤外光を用いた走査型局所赤外反射スペクトル測定法によるモット転移近傍での電子相分離の研究を,(IV)ナノメータースケールのプローブとして走査型トンネル顕微鏡を用いた電荷秩序状態の研究を行った.また,これらの実験研究に使用する単結晶試料の継続的育成を行った.
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