本研究は、種々の分子性導体の電子状態、特に電荷秩序と超伝導に関して、密度行列繰り込み群の方法により、(1)多彩な電荷秩序・スピン秩序状態と低エネルギー励起を記述する有功強相関模型の構築、(2)電荷秩序の融解と電荷揺らぎが生み出す新規な超伝導発現機構の解明、の2点を目的に遂行された。 平成17年度の成果は次のとおりである。 まず、次の3点に関する論文を発表した。(1)ベッチガード塩のトリプレット超伝導に対してリング交換機構によるf波超伝導の可能性を提案した。(2)1次元拡張ハバード模型の相図の精密化と朝永ラッティンジャー流体パラメータの精密計算を行った。(3)電荷秩序不安定性を有するクオータフィリングのハバード梯子系に関して電荷揺らぎがスピン励起に与える影響を調べた。 また、次の課題に関して成果を得た。 (1)強磁性交換相互作用で梯子型あるいはジグザグ梯子型に結合した2鎖および3鎖ハバード模型のスピン三重項超伝導の可能性を調べ、条件に応じて、p波あるいはf波対称性の超伝導が発現することを明らかにした。 (2)低次元強相関電子模型の最も簡単な、しかしまだ良く分かっていない、ジグザグ梯子ハバード模型に関して、幅広いパラメータおよびドーピングの空間での朝永ラッティンジャー流体パラメータやスピンギャップの有無、さらにはスピン及び電荷励起スペクトルの計算を行った。 (3)ボロンが高濃度にドープされたダイヤモンドの超伝導に関して、ポロンの置換型ランダムネスの効果をコヒーレント・ポテンシャル近似で取り入れ、この系の超伝導へのランダムネス効果の重要性を明らかにした。
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