本年度は、高性能有機トランジスタ材料の開発を重点的に行った。物質開発では「ハイブリッド化合物」の考え方を提案し、開発戦略として、「分子ユニットをパラメータとする」開発手法を用いた。次にその詳細について述べる。 1.pチャンネル材料の開発 キャリア移動度向上のためには薄膜中での分子間相互作用を高めることが重要であるという認識より、カルコゲノフェノン誘導体について検討を行った。目的化合物は「コアユニット」と「サブユニット」との組み合わせにより検討した。約30種類の候補化合物を検討したところ、「コアユニット」として、含セレン化合物のベンゾジセレノフェンが「サブユニット」としては、フェル、ビフェニル、ナフチルなどの化合物が良好なトランジスタ応答を与えることが判明した。 2.nチャンネル材料の開発 nチャンネル材料は未だ例が少なく、その開発が待ち望まれている。本課題では上記1で良好なトランジスタ特性を示した「コアユニット」を用い「サブユニット」として強力な電子吸引基を有するユニットを組み合わせることで、新規n型材料の開発を行った。末端にトリフルオロメチルフェニル基を有する化合物(CF_3-DPh-BDS)では、キャリア移動度0.1cm^2/Vsと蒸着膜としては最高レベルのキャリア移動度(電子)を得ることに成功した。
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