研究概要 |
本研究では、以下のような観点について研究を進め、いくつかの興味ある結果を得た。 1.1/4-充填ダイマー型モット絶縁体、(DMe-DCNQI)2M、(M=Li、Ag、Li-Cu)、 2.8GPaの高圧下で反強磁性から超伝導への転移を示す(BEDT-TTF)2ICl2、 3.BEDT-TTFの2次元シートとTCNQの1次元鎖からなるβ',β"-(BEDT-TTF)TCNQ、 そして、交互積層型の 4.圧力下で中性-イオン性転移を起こす(BEDT-TTF)(ClMeTCNQ)、 5.120Kで分子間の重なりの変化に伴う1次転移を起こす(BEDO-TTF)(Cl2TCNQ)、 6.金属イオンを挿入したDNAの電子状態 1.については、Li塩について詳しい結果を報告してきたが、4kF-CDWのMott絶縁体相における電気伝導機構をほぼ統一的に理解することが出来た。また、固体高分解能NMRにより、DMe-DCNQI分子内のπ電子分布を求め、Ag塩では、DMe-DCNQI分子上に1.2個、或いは0.8個のπ電子しかいないこと、その分、Agのd-電子が電子状態を担っていることを示した。これは、この系の物性を系統的に理解する上で、重要な意味を持つと考えられる。 2.については、2GPa以上に圧力を加える装置開発を進めている。超伝導相にどのように繋がり、超伝導との関わりを調べる手がかりとして行きたい。 3.については、2つの結晶構造の異なるβ'とβ"相を対比的に調べた。β'相では、BEDT-TTF(ET)とTCNQ分子がほぼ直交しているが、バンドとしてはc軸に広いが、両分子間相互作用は非常に弱く、20Kでは、TCNQ相は常磁性のまま、ET相が3次元的反強磁性秩序を起こし、3Kでは独立にTCNQが反強磁性相に入ることを確認した。一方、β"相では、170、80、20、10Kと、多くの相転移が現れる金属的な振る舞いをするが、その出現機構をWバンドESRにより、解析を進め、170Kは、ET相で転移が起こり、80K以下ではg値、線幅共に周波数に比例した異常が観測され、何らかの磁気秩序の存在が重要な寄与をしていることが明らかになってきた。 6.については、天然のDNAは磁気的に不活性で、2価イオンのドーピングが新たな物性を示す事が分かった。
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