研究課題
シリコンやゲルマニウムなどIV族元素は半導体として今日の情報電子社会を支える基盤材料であるが、それらが混合してIV-IV族固溶体を形成すると新規材料としてバンドギャップ制御及び格子定数制御工学への応用が期待できる。本申請者は昨年度までに代表的なゲルマニウムシリコン固溶体が無秩序配列で、かついわゆる不完全ポーリング型の特異な構造であることを見いだし、さらにIV-IV族二元および三元固溶体半導体についてもその可能性があることを得た。本研究はそのような無秩序構造の半導体ガラスを育成し、さらにその原子周囲での局所構造を調べて原子間結合の特徴を解明し、それに起因する物性を広範に応用するための基礎知識の確立を目的として進めた。本年度は以下の成果を得た。(1)高品質のGeSi固溶体の構造と基礎物性の解明を進めた。半導体材料としての応用において、最も重要なパラメータである電荷の移動度を定量測定し、組成に対する依存性、温度変化、不純物濃度依存性を明らかにし、それを支配する機構が固溶体効果と不純物散乱であることを解明した。そして、簡便な抵抗値の測定から電荷不純物濃度を決定する関係を得た。(2)Ge-Si-Sn三元とGe-Snの二元化合物半導体について、Sn組成が0から100%まで20-25%間隔で、Si組成が0から50%まで種々の組成の試料を急冷法により育成した。それらの試料についてEDX法による組成分析の後、物質構造科学研究所放射光施設(KEK-PF)と高輝度放射光施設(Spring-8)の透過型XAFS法により、Ge原子及びSn原子周りの局所構造解析を行った。そして、その局所構造はゲルマニウムシリコンと同じ、Pauling型と呼ばれる結合距離が結合の組み合わせによって異なり、かつ組成によって変化する特徴を示すことを得た。(3)IV-IV族化合物の原子間結合と相安定性について第一原理計算によって検討し、Si-GeとGe-rich Ge-Snが無秩序ダイヤモンド構造半導体として安定であること、また、非常に安定な規則構造半導体のSiCを除き、構成元素の格子定数の著しく異なるSi-SnやGe-Snなどは相分離する系であることを予測した。
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Japanese Journal of Applied Physics, Part I 45(印刷中)
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