研究概要 |
広い過冷却液体温度領域を持つ安定なZr-Al-Ni-Cuバルク金属ガラス合金における原子移動のダイナミクスを定量的に解明することを目的として,室温からガラス転移温度(約410℃)の温度範囲において,その弾性・擬弾性挙動を調べた.具体的には,捩り振り子型の装置を用いて,サブレゾナンス強制振動法により10^<-3>Hzから10Hzの振動数範囲で動的複素弾性率を測定した.また,共振自由減衰法による共振振動数と対数減衰率の測定も一部行った. 室温から200℃付近までの温度領域においては,剪断弾性率(複素弾性率の実数部)は結晶と同様に温度上昇とともにわずがに低下するのみで,弾性エネルギー損失(複素弾性率の虚数部と実数部との比)も10^<-4>のオーダーの構造緩和に起因すると考えられ,弾性率の測定は構造緩和の定量的解析に有用であることが明らかになった. ガラス転移温度ごく近傍の温度では,弾性率が急激に低下し,室温における値よりも一桁程度小さくなることが見出された.これはガラス固体状態から過冷却液体に状態(構造)が変化したためとも考えられるが,温度を一定に保って振動数を変化させて複素弾性率のスペクトルを測定すると,弾性率は低振動数側で大きく低下し,また弾性エネルギー損失には粘性流動の寄与以外の成分が含まれることがわかった.これは,種々のガラス固体で観測されている動的なガラス転移,いわゆるα緩和に対応すると考えられる. 次年度は,以上の現象を定量的に解析し,このような動的挙動のメカニズムを検討する.
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