研究課題/領域番号 |
16039214
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
馬越 佑吉 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00029216)
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研究分担者 |
永瀬 丈嗣 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (50362661)
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キーワード | 金属ガラス / 電子線照射 / 結晶化 / ナノ結晶 / アモルファス / ナノテクノロジー / 照射誘起結晶化 / 組織制御 |
研究概要 |
Fe-Zr-B系、Zr-Cu系、Zr-Cu-Ni系金属ガラスの熱誘起結晶化過程と電子線照射結晶化過程ならびに結晶相の構造、形態を調べると共に、電子線誘起結晶化機構を明らかにした。Fe-Zr-B系金属ガラスの場合、熱処理に伴ってアモルファス相からbcc相さらに化合物相が晶出した。低ボロン濃度の合金ではナノ組織を形成するが、高ボロン濃度になるとアモルファス相が安定となり、結晶化温度が上昇するため、結晶成長速度が速くナノ結晶組織を得ることが困難となる。一方、アモルファス相に電子線照射を行うと、室温以下の低い温度にも関わらず、結晶化が起こる。しかも、高ボロン濃度の合金であっても容易にナノ組織制御が可能である。この電子線照射誘起結晶化は、照射温度、照射電圧、照射密度、照射量依存性を示した。照射温度が低下すると、化合物相よりもbcc相の結晶化が優先される。Zr-Cu系、Zr-Ni-Cu系金属ガラスの熱誘起結晶化は、アモルファス相からfcc相への結晶化を経た後、化合物相の析出が起こる。これら金属ガラスのアモルファス相に電子線照射を行うと、bcc相に代わってfcc相が晶出し、更に照射を続けると化合物相が析出し、熱誘起結晶化とは異なった挙動を示す。また、熱処理によって析出したbcc相に電子線照射を行うと、アモルファス相に変化した後、照射誘起結晶化によりfcc相を形成する。しかも、電子線照射誘起結晶化を用いれば、いずれの金属ガラスもナノ組織制御が容易に達成される。電子線照射の場合、電子の弾き出し効果により、熱的に安定な結晶構造に乱れを生じるが、多数の欠陥が導入されているため、局所領域での原子の移動が容易となり、新たな結晶相を形成する。この場合、電子線照射下では結晶相の単位体積が小さい結晶ほど安定であり、この相安定性の違いが熱誘起結晶相と電子線照射誘起結晶相の違いを生み出すことが明らかとなった。
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