研究概要 |
本年度は本研究課題の初年度であり、購入装置の選定、設置および性能テスト等に多くの時間が費やされたが実際の研究も予定通り着実に進んだ。本研究の目的は第1にMg系バルク金属ガラスとして知られているMg_<65>Cu_<25>Y_<10>のガラス形成能を明らかにすることである。すなわちこの合金組成でガラスが安定化する理由を明らかにすること。第2に、このバルク金属ガラス(BMG)は作製直後から室温における時効により容易に脆化するため、この合金の脆化機構を明らかにすることである。そのため今年度はMg_<65>Cu_<25>Y_<10>についてガラス状態でのCuおよびYの局所構造をEXAFSにより調べた。その結果、CuおよびYともにその局所構造はhcp Mgでよく近似できることが明らかとなった。すなわち本合金は最密充填構造に近いことが明らかとなった。本合金は原子半径比がCu,Mg,Yで1:1.25:1.41である。剛体球モデルでの計算が必要であるが、Mg_<65>Cu_<25>Y_<10>の組成がもっとも密度が高く、ガラス(過冷液体)が安定化する可能性が高い。次に本BGMの安定性を調べるために、純Mgに微量に添加したCuおよびYの局所構造をやはりEXAFSにより調べた。その理由はアモルファス状態では構造の特徴を調べることは容易でない。結晶状態では各合金元素がお互いにどのような影響を与えているかを詳しく知ることが可能である。我々は純MgにCuおよびYを1.0%加えたもの、さらにはCuとYを同時に加えた溶融急冷リボン試料のCuとYのK吸収端のEXAFSを測定した。その結果Yはhcp Mg中に固溶しているが、Cuの場合は化合物Mg_2Cuを形成する。ところがCuとYを同時に1%ずつ添加した場合にはこれらは固溶状態となる。このことはMg中のCuはYの添加により状態が大きく変化することを示している。本研究ではさらにCuとYの濃度を増加したときの変化を調べていく予定である。
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