研究概要 |
本年度は,DNA溶液を電解質マイクロプラズマと捉え,そのDNA溶液に電場を印加することによるDNA内包単層カーボンナノチューブ(CNT)の形成,及び溶媒自体を炭素源とする有機溶媒中アーク放電マイクロプラズマにおいて,従来とは異なる手法での多層CNT形成実験を行った. 1.電解マイクロプラズマ利用のDNA内包カーボンナノチューブ形成実験 (1)予めDNAを構成する塩基数が同じ,つまり鎖長(〜5nm)が同一の一重らせんDNA(直径〜2nm)を溶解させたDNA溶液中に,開端処理した単層CNT(直径1〜2nm)塗付基板を挿入した. (2)DNAは水溶液中で負イオンとして存在するので,基板に直流電場を印加することでDNA負イオンを陽極側へ輸送・照射し,さらに溶液中で糸玉状構造をとるDNAを効果的にCNTへ内包させるために,DNAを伸張させるための高周波電場を重畳印加した. (3)DNA負イオン照射後のCNTをラマン散乱分光及び透過型電子顕微鏡により解析した結果,DNAを内包した単層CNTの創製に初めて成功した. 2.有機溶媒中アーク放電マイクロプラズマ利用のカーボンナノチューブ形成実験 (4)有機溶媒中においてギャップ間隔が1mm以下の金属電極を用いて,アーク放電マイクロプラズマを生成した.有機溶媒としてヘキサン,トルエン,金属電極としてモリブデン,鉄,ニッケルを用いて実験を行った. (5)有機溶媒としてトルエン,触媒金属としてニッケル電極を用いてアーク放電(電圧20V,電流30A)を行った場合に,陽極に堆積した煤中に,放電により生成されたニッケル微粒子を起点として形成された多層CNTが存在していることが明らかになった. (6)ニッケルの触媒効果により従来よりも低温度でのCNT形成が実現されたと考えられ,今後実験を行うDNA分散溶媒中であってもDNAへの損傷無くCNTの形成が可能であることが示唆された. 現在は上記I,IIの実験を融合させ,液相におけるプラズマ制御を実現し,DNA内包CNTの高収率大量合成に向けて実験を継続している.
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