高圧高温の中性である超臨界流体を電離することにより得られるプラズマ放電においては、超臨界状態における原子のクラスタリング等、超臨界流体に特有の現象のために、放電機構が通常の気体放電機構と異なる。本研究は、このような超臨界流体における堆積の小さなプラズマ(マイクロプラズマ)の放電機構を理論と数値シミュレーションを用いて解析し、その基礎的性質を明らかにすることを目的とする。とくに、平成16年度は、微小ギャップにおける超臨界流体中の放電実験において報告されている放電開始電圧が大きく降下する観測事実説明する理論モデルを構築した。このモデルは、超臨界状態において、流体中に原子のクラスターと小さな空隙(マイクロキャビティ)が生成され、そのマイクロキャビィにおいて電子が十分加速されることにより、イオン化に必要な運動エネルギーを、背景流体の平均的な密度が比較的高いにもかかわらず得られることが、臨界点近傍においてイオン化率(すなわち第一タウンゼント係数)が増大する主たる理由という仮説に基づいている。いうなれば、超臨界状態においては、マイクロキャビティという電子の通りやすい道(電子チャネル)が、そこで電子が衝突なく加速されること(電子チャネリング)により、イオン化率が上昇する。このイオン化率の上昇値は、背景流体の原子(分子)配位に依存しいる。現在、分子動力学シミュレーションを用いて、超臨界流体の熱平衡状態と、イオン率などのプラズマパラメータの関係を定量的に調べている。
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