研究概要 |
我々はこれまでに、中性子回折法によりミオグロビン、ルブレドキシン(野生型、変異型)の水和構造を1.5Å分解能で決定し、そこで決定された水和水をフーリエ図に現れた形状から分類してみた結果、4種類、三角形型、長い棒型、短い棒型、球型のどれかに属することを見いだした。これら形状の違いは、水和水が近傍のアミノ酸残基とどのような水素結合の仕方をしているか及び水和水の分子運動の程度を反映している。例えば、三角形型に見える水和水の多くは3方向でそれぞれ近傍の原子と水素結合しており、温度因子を解析してみると他の形状の水和水より小さい値をとっていることが判明した。また、棒型、球型は2方向、1方向でそれぞれ近傍の原子と水素結合している。 タンパク質の水和構造はタンパク質周囲にダイポールモーメント場を形成する。その場をいくつかの基本的なタンパク質(proteinase K,α-amylase,β-lactoglobulin,α-lactoalbumin,2Zn insulin and cubic insulin)で求め、タンパク質表面に表れているアミノ酸残基と水和構造が形成するダイポールモーメント場の相関を得るため、基本的なタンパク質の中性子回折法による水和構造決定を行う。そのためには中性子回折実験に耐える大型結晶育成が必須で、我々がすでに開発した結晶成長相図を求め、それに基づいた結晶育成が適している。その結果、β-lactoglobulin,2Zn insulinとcubic insulinで大型結晶が得られた。
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