研究概要 |
水分子ネットワークはタンパク質のフォールディング、ダイナミクスおよび分子認識にも関与していると考えられ、基本的なタンパク質(cubic insulin, RNase A,β-lactoglobulin,α-amylase,2Zn insulin等)の周囲を取り巻く水分子のネットワークの詳細を調べるため中性子回折実験を行うことにし、それぞれの大型単結晶育成を開始した。中性子回折実験では最低約1mm立法の体積のタンパグ質単結晶が必要である。タンパク質大型結晶育成は、一般的には困難であるが、良質大型結晶は溶解度曲線を含む相図のある一定領域で得られることを見いだした。次の基本的なタンパク質、RNase A,β-lactoglobulin.α-amylase,2Zn insulinの結晶成長相図を作成することに成功した。結晶成長相図に基づき準安定領域あるいはそれの近傍で大型結晶育成が可能であることが判明したので、相図が求まったタンパク質について大型結晶育成を行った結果、体積1mm3以上の大型単結晶が得られた。タンパク質の結晶品質を定量化する手法が確定していなかったが、我々は新たに次の3種類の方法を提案し、これによりInsulin, RNase A,β-lactoglobulin, 2Zn insulinの結晶品質評価を試みた。1)結晶のOver all B-factorを用いる。2)1/1000度以下に角度の広がりを押さえた平行ビームで結晶のロッキングカーブを求める。3)結晶中の分子配向の乱れに起因する散漫散乱の大小を評価する。大型単結晶が得られた、Insulin (pD=6.0)分解能2.5Å、RNAase A分解能1.7ÅでFull data setの取得を完了した。また、2Zn Insulinでは分解能1.8Åのdataが取得できることが予備実験で判明した。
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