研究課題/領域番号 |
16041204
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
熊谷 泉 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10161689)
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研究分担者 |
津本 浩平 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (90271866)
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キーワード | 抗原 / 抗原抗体相互作用 / 結晶構造解析 / 特異性・親和性 / 熱力学 / 分子認識 / 変異導入 / 相補性 |
研究概要 |
本研究では、抗体への変異の導入が可能でかつ研究代表者らがその複合体の構造解析をすでに明らかにしている二つの抗原抗体相互作用(リゾチーム-HyHEL-10相互作用、低分子毒素シガトキシン-1C49相互作用)について、相互作用界面に存在し、水素結合を介して界面に存在するアミノ酸残基と結合している水分子の、相互作用における特異性・親和性に対する寄与を実験的に考察することにより、生命分子間相互作用に一般的に見られる、不完全な相補性を補う界面水分子が相互作用の特異性・親和性創出に果たす役割を明らかにすることを目的としている。本年度の成果は以下の通りである。 1.リゾチーム-HyHEL-10相互作用:抗原と結合していない状態の可変領域断片の結晶構造を明らかにし、すでに明らかにしている複合体の結晶構造との比較により、抗原認識領域に見られる特徴的な水和構造と変異導入による相互作用の熱力学パラメーターの変化との対応を中心に議論を進めた。 2.ヒト型化抗体-抗原相互作用:ヒト型化を施したHyHEL-10と抗原リゾチームの複合体構造を明らかにし、熱力学パラメーターとの対応について議論を進めた。熱力学的解析と構造解析から、可変領域間の構造の微調整が抗原抗体相互作用に重大な影響を与えることを示すと共に、抗体のヒト型化において可変領域間の適切な会合が重要であることを明らかにした。 3.シガトキシンCTX3C-1C49相互作用:複合体構造に基づいて、抗原認識に関与するアミノ酸残基を中心に、Ala残基に置換した変異体を作製し、抗原との相互作用に関して、表面プラズモン共鳴法による解析を行い、抗体1C49の抗原結合部位に局在する芳香族アミノ酸残基の一部が、ポリエーテル化合物であるシガトキシンとの相互作用に重要であることを示し、芳香族性が重要であることを明らかにした。
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