狂牛病やヒトのヤコブ病、アルツハイマー病をはじめ、近年、タンパク質の組織化・増幅現象としてタンパク質の3次元構造変化(ミスフォールディング)に起因したアミロイド線維形成に高い関心が集まっている。このような特性を有するタンパク質の立体構造形成および構造転移の原理を解明することは非常に重要であり、当該領域における研究は、水とペプチド・タンパク質が関わる新現象の発見やそれらの動的制御に有機的に結びつく。本研究では、アミノ酸配列から設計したシンプルな配列を有する設計ペプチドや人工RNAを利用することにより、自己増幅的に立体構造変化を起こさせ、アミロイド線維化を解析・制御するシステムを構築する。 人工ペプチドによるAβアミロイド形成増幅:疎水性ドメイン他、立体構造形成に寄与する疎水性、親水性、電荷アミノ酸の役割を種々シークエンシャルにデザインしたペプチド群を合成することにより、自己組織化集合体の形成を系統的に調べる。今回アルツハイマーAβペプチドの線維形成を増幅する人工ペプチドを10種デザイン・合成し、増幅反応について検討した。さらに詳細な物理化学情報を得る。 人工RNAによるAβアミロイドの形成阻害:種々の合成ペプチドを用いたアミロイド研究の知見をもとに、Aβの線維化を阻害する人工RNAのSELEX法による選択を試みた。数種の阻害効果をもつRNAアプタマーの候補を得た。さらに簡便な阻害検出系の構築などを行い、阻害能の詳細について検討する。 人工ペプチド線維を利用したナノバイオ素材:上記の線維構造を有するペプチドの知見を基に、アミロイド線維上に金コロイドなど機能性基を配置したナノバイオ素材を構築した。アミロイドの線維構造の情報を得る素材としても利用可能である。
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