研究概要 |
本研究では、蛋白質複合体のモデル系としてバクテリオファージに注目し、分子集合の過程における水溶液中の分子間相互作用を明らかにすることを目的としている。 本年度は特に基盤蛋白質gp10、gp11、gp13、gp14に焦点を合わせて実験を行い、以下の結果を得た。 1.Gp10とgp11を共発現させると20℃、pH8.0で沈降係数9.3S、分子量269,700の会合体を形成しており、(gp10)_3(gp11)_3のヘテロ6量体と結論された。他方、gp10とgp11を別々に発現して20℃、pH8.0で混合しても会合は起こらなかったが、pHを6.0まで下げると会合した。この会合体は安定で、pH8.0に戻しても解離しなかった。この不可逆性の原因を探るため、以下のような実験を行った。 2.pHをさらに11まで上げると(gp10)_3(gp11)_3複合体は各3量体に解離し、各3量体はこのpHでも安定であった。また、(gp10)_3(gp11)_3複合体は37℃では若干解離する傾向がある。同複合体は尿素により2-4M間で可逆的に解離し、6Mで完全に解離した。ただし、この濃度でも各3量体は安定に存在した。 3.Gp13はネック蛋白質である。この蛋白質をコードする遺伝子13をクローニングし、大量発現に成功した。この蛋白質の超遠心分析を行った結果、本蛋白質は水溶液中では単量体として存在することが分かった。同じくネック蛋白質であるgp14のクローニング、発現にも成功したが、本蛋白質は凝集しやすい性質を持つことが分かった。
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