研究概要 |
本研究は、蛋白質複合体のモデル系としてバクテリオファージに注目し、分子集合の過程における水溶液中の分子間相互作用を明らかにしようとするものである。本年度は特に基盤蛋白質gp13,gp14,gp16,gp17,gp48,gp54に焦点を合わせて実験を行い、以下の結果を得た。 1.gp13及びgp14の単離・精製と性状解析 gp13とgp14はネックを構成する蛋白質で頭部形成の最終段階で結合し、尻尾との結合部に存在すると考えられる。両蛋白質は超遠心分析の結果、単独では単量体として存在すること、また両者を混合するとgp13:gp14=1:2の比率で結合することが分かった。 2.DNAパッケージング蛋白質gp16とgp17の単離・精製と性状解析 2本鎖DNAファージには共通して大小2種のパッケージング蛋白質が必要である。T4ファージでは大サブユニットがgp17、小サブユニットがgp16で、後者にはATPaseはないが、前者のATPaseを50倍以上促進する。両蛋白質を単離精製し、超遠心分析を行ったところ、gp17が単量体であるのに対して、gp16は20量体と思われる分子種が主要成分で、少量の10量体と思われる分子種と平衡にあることが分かった。一方、gp16とgp17の間には弱い相互作用しか見られなかった。 3.基盤形成の最終ステップに結合するgp48とgp54の単離・精製と性状解析 gp48とgp54は基盤形成の最終段階で結合する蛋白質で、gp54は尾管イニシエーターを呼ばれる。両蛋白質遺伝子をクローニングし、単離精製することを試みたが、良く発現はするものの、不溶性画分に入り、発現温度、IPTG濃度など発現条件を検討したほか、コールドショックプロモーターを試みたが、可溶性画分として精製することができなかった。しかし、gp48については発現温度22℃、15時間で半分以上を可溶性画分に回収することができた。現在、結晶化の準備を進めている。
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