研究概要 |
タンパク質立体構造形成の本質を理解するためには、タンパク質の変性状態や中間体構造を調べることも重要である。本研究では、超好熱菌Pyrococcus furiosus由来Pyrrolidone carboxyl peptidase (PCP)のCysフリー変異体(Cys142/188SerPCP, PCP-0SH)についてフォールディング開始直後の立体構造を研究し、以下の成果を得た。 1.8.0Mグアニジン塩酸塩存在下でPCP-0SHを完全に変性させた後、4℃,pH2.2の条件下で透析によりグアニジン塩酸塩を除去しリフォールディング反応を開始した。この実験条件では、PCP-0SHのリフォールディングは異常に遅く、リフォールディング開始直後の状態を見かけ上保つことができる。PCP-0SHのどの部分が立体構造を保持しているのかを解明するために、ペプシンによる限定分解を利用した。その結果、リフォールディング開始直後のPCP-0SHは、ペプシンによりTyr111とPhe112の間で容易に切断されることがわかった。Tyr111とPhe112は、2本の短いβストランドからなる逆平行βシート構造に位置することから、このβシート構造はフォールディング開始直後に形成されていないことが示唆された。 2.PCP-0SHのリフォールディング開始直後の状態についてNMRを用いて研究を行った。リフォールディング開始直後の状態についてHSQCスペクトルを測定すると、天然状態のスペクトルとは明らかに異なった変性中間体に特徴的なスペクトルを示した。NMRスペクトルを解析するために無細胞タンパク質発現系を構築しアミノ酸選択的安定同位体標識を試みた。Lys, Pheのみを^<15>N標識したPCP-0SHを作製し、HSQCスペクトル上でLysやPheのみを観測することに成功した。
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