研究概要 |
1.モデル高分子として,ポリビニルアルコール(PVA),ポリビニルメチルエーテル(PVME),および,ポリN-イソプロピルアクリルアミド(PNiPAM)をとりあげ,これらの水溶液について分子動力学シミュレーションを行った。水分子を(1)高分子の親水基の周囲,(2)疎水基の周囲,および,(3)それ以外のバルク領域に分類し,それぞれの領域について,水素結合数分布,水素結合の寿命,配向緩和時間などを計算し,各親水基や疎水基が水の水素結合の構造やダイナミックスにおよぼす影響を調べた。PVAは水分子との水素結合により安定化される一方,水の水素結合ネットワークを乱す。また,大きな疎水基をもつPNiPAMの周囲では水分子の運動性が低下し,水のエントロピー減少が示唆された。今後,濃度依存性などについて詳細に検討し,水分子の区分化による影響を明らかにする(研究代表者)。 2.アミロイド線維と関連して,ポリグルタミンの水溶液について,分子動力学シミュレーションを行い,上記と同様の解析により,ペプチド鎖と水分子との直接の相互作用を解析した。また,ポリグルタミンの凝集体と水との相互作用を解明するために,βシート状の分子鎖の集合体と水との2相界面モデルの構築を進めている。来年度に詳細な解析を行う。なお,これに先立ち,有機液体と高分子結晶との2相界面モデルに関して論文発表を行っており,類似の解析をすすめる(研究代表者)。 3.新規な環状アラミド分子を堆積させることにより,円筒状のチャネルをもった膜モデルを構築し,この膜と水との相互作用の解明を進めている。まず,分子軌道法により環状アラミド分子の構造,および分子間の相互作用を求め,堆積する可能性がある分子構造を抽出した。次に,環状アラミドの堆積膜モデルを作成し,水分子の収着挙動について分子動力学シミュレーションを行った。極性基が規則正しく並んだチャネル内で,水分子が静電場から受ける影響に着目して解析を行った(研究分担者)。
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