研究概要 |
(1)蛋白質は天然構造に向かって傾斜するファネル状のエネルギーランドスケープを持つ。この性質を重視して作られた理論モデルとしてGo相互作用を持つ様々なタイプのモデルがあるが、我々はそのうちWako-Saito-Munoz-Eaton(WSME)モデルを用いてprotein A,およびcalmodulinのフォールディング過程について分析した。多次元自由エネルギー面の解析により、protein Aにおける局所的安定性とfoldingの順番が異なる理由を説明し、これまでの実験と理論の不一致を解決できることを示した。 (2)経験的ポテンシャルを用いて計算機内で配列選択シミュレーションを行った。ランダム配列から始めて機能に関する選択を行うことによって、folding能力が獲得されることを示したほか、選択の結果得られた配列のfolding過程(個体発生)と選択による構造形成過程(系統発生)の間に相関があることを示した。 (3)Go相互作用に基づくモデルが有効であるということの物理的基礎は、蛋白質の局所的断片がとりやすい構造と全体構造が互いにコンシステントであるように配列が設計されていることにある。この特徴を生かして経験的ポテンシャルを構築し、ランジュバン分子動力学法に基づくfoldingシミュレーションによって、数10残基の蛋白質構造を再現する方法を開発した。 (4)ナノメートルサイズの疎水的溶質としてC_<60>およびC_<60>H_<60>を取り上げ、溶質のまわりの水和構造を分子動力学計算を用いて分析した。ナノメートルサイズの溶質の周囲の水の密度、および水素結合の空間的構造は大きくゆらぎ、疎水的相互作用に強い影響を与えることを明らかにした。
|