フェムト(〜10^<-15>)秒オーダーの超短パルス光を用いて系を励起しそのコヒーレントな応答をみることで動的過程を追うフェムト秒コヒーレント分光法(FCS)という手法が注目されてきている。そこで本研究においては、この手法を用い蛋白質の持つ反応に結合した低振動モードの由来を明らかにし、コヒーレントな過程と反応および蛋白質機能との相関に対する知見を得ることを目的としている。こうした低振動のモードは蛋白質のもつゆらぎと機能の相関に強く関連している。そこでまず蛋白質中に置いてこのような揺らぎがどのように現れてくるか、またそれが機能とどのように関連しているかをヘムタンパク質Cytochrome cを用いて調べた。また、低振動モードと機能_化学反応がどのように結合しているかを蛋白質で詳細に調べるのは非常に困難であるのでポルフィリン結合系のモデル化合物を用いてその電子移動反応を詳細に検討し、コヒーレントな低振動モードが反応に関与していることを直接見いだした。 今回ヘムタンパク質Cytochrome cのSoret帯励起による光解離反応後の超高速緩和過程を観測し、その活性中心とゆらぎについて興味深い知見を得た。中心金属の鉄の価数の異なるが構造的には相同性の非常に高い酸化型、還元型について実験を行ったところいずれの場合も5配位型への光解離反応が見られた。ここで、数百フェムト以内の超高速緩和過程を波長分解して測定したところ、酸化型では線幅が狭まりながらシフトする様子が観測され、はじめからブロードニングを起こしている還元型とそのゆらぎに関して大きな違いがあることがわかった。
|