研究課題
低温菌や好熱菌が生産する極限酵素の温度特性はこれらの微生物の生育温度特性を反映する。しかし、その分子機構はまだ解明されていない。極限酵素の環境適応機構を明らかにするためには、極限酵素と非極限酵素の安定性や活性を比較し、その違いをもたらす構造因子を同定することが有効と考えられる。本研究では、リボヌクレアーゼH、FKBP22、サチライシン等をモデル蛋白質として低温菌や好熱菌由来酵素の環境適応機構について研究し、以下の成果を得た。1.荷電性アミノ酸の増加が好熱菌蛋白質の安定化の主要因であることが提案されている。実際、高度好熱菌由来Tt-RNaseHIの荷電性アミノ酸含量は大腸菌由来Ec-RNaseHIより高い。しかし、分子表面の荷電性アミノ酸の割合を増加させたEc-RNaseHI変異体は野生型酵素よりむしろ不安定化していた。この結果は、荷電性アミノ酸の増加が必ずしも蛋白質の安定化をもたらすとは限らないことを示唆する。2.超好熱古細菌(始原菌)由来Tk-RNaseHIIの変性速度実験を様々な温度で行い、温度とΔGの相関曲線を描くことにより、本酵素の熱力学的安定性を解析した。その結果、Tk-RNaseHIIの曲線はTt-RNaseHIと比べると高温領域に平行移動していること、その安定性は40℃付近で最大になることを明らかにした。この結果は、Tk-RNaseHIIはTt-RNaseHIより平衡論的にも速度論的にも安定化していることを示す。3.超好熱古細菌(始原菌)由来サチライシンは、プロ体からプロペプチドが切断されて活性型の成熟体になること、この成熟化は高温によく適応していることを明らかにした。また、低温で発現が誘導される低温菌由来FFBP22が安定性の異なる二つのドメインから成ること、そのペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼ活性は低温によく適応していることを明らかにした。
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