研究課題/領域番号 |
16041230
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
富永 圭介 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 教授 (30202203)
|
研究分担者 |
水谷 泰久 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 助教授 (60270469)
太田 薫 神戸大学, 大学院・自然科学研究科, 助手
|
キーワード | 化学物理 / 生物物理 / 高性能レーザー / 水和 / 蛋白質 / 非線形分光 / ラマン分光 |
研究概要 |
超短パルスレーザー分光を用いて、水及び水溶液中のイオンやタンパク質の動的挙動に関する研究を行う。特に、動的揺らぎや集団運動の検出とその解析、それらが反応やタンパク質の動的構造に及ぼす影響を明らかにする。 1.赤外短パルスによる非線形分光を用いて水溶液中における溶質の振動状態のダイナミクスを調べることを目的とする。本年度は、フェムト秒赤外レーザーの改良を行い、2000-3000cm^<-1>付近の赤外パルスを1μJ/pulse以上のエネルギーで得ることに成功した。パルスーパルスの安定性は1%rms以下で、従来のレーザーより格段に安定性が改善された。これを用いて水溶液中のOCN^-の反対称伸縮振動の過渡吸収信号を得た。 2.時間分解紫外共鳴ラマン分光法は、タンパク質の芳香族アミノ酸側鎖や主鎖の振動を観測することにより部位特異的な構造変化の情報を与え、活性部位での反応に応答したタンパク質の動的構造を研究する上で有効な手法である。本研究では、連続波長可変(204-243nm)なピコ秒紫外光源と高感度の検出系とを組み合わせたピコ秒時間分解共鳴ラマン分光装置を新たに製作した。これを用いて、リガンド脱離に誘起されたミオグロビンの高次構造ダイナミクスの観測に成功した。トリプトファン残基のラマンバンドの変化から、ピコ秒領域でA-Eヘリックス間に構造変化が起きることが示唆された。 3.偏光制御ポンプ-プローブ分光装置を開発し、水溶液中における遷移金属イオンのアクア錯体の励起状態ダイナミクスを観測する。この電子遷移は禁制遷移であるため、信号は極めて弱いと予測され、そのため過渡二色性や過渡複屈折性を測定することにより、励起状態ダイナミクスに関する知見を得る。Cu^<2+>錯体からの信号を検出することができ、1ps程度の時定数を持つことを見出した。この成分は錯体の励起電子状態における振動緩和によるものであると同定した。
|