研究課題
蛋白質のフォールディング反応に関して、ストップドフロー法を用いた研究により、比較的遅い時間領域での情報は多く得られたが、ストップドフロー法の不感時間である1ミリ秒よりも早い時間領域での知見は依然少なく、フォールディング反応の初期過程を種々の蛋白質で観測できる新しい手法が待ち望まれている。また、蛋白質のフォールディング過程での蛋白質の水和に関する情報は限られている。そこで、本研究では、蛋白質から光解離する修飾基を用いて、光で蛋白質のフォールディング反応を開始させる新しい手法を、アポプラストシアニン(apoPC)などを例に提案している。本年度は以下の成果を得た。1.修飾apoPCへの光照射前後での立体構造変化:最少培地で形質転換した大腸菌を培養し、^<15>NラベルapoPCを得た。得られた^<15>N-apoPCの2次元NMRを測定し、観測されたピークを帰属した。その後、^<15>N-apoPCのCys84に4,5-ジメトキシオルトニトロベンジル基を修飾し、2次元NMRを測定したところ、修飾apoPCが完全な変性状態にあることが判明した。この修飾apoPCに355nmのパルス光を照射すると、apoPCのネイティブ構造に由来する2次元NMRピークが観測され、光照射により蛋白質の立体構造が元に戻ることが証明された。2.ApoPCのフォールディング反応における蛋白質の体積変化:過渡回折格子法により、修飾apoPCへ355nmの光を照射すると、修飾基が400nsで蛋白質から解離することが解った。また、光照射すると、約270μsで蛋白質の体積減少が観測され、この体積変化は変性状態から初期段階での疎水基凝集への変化に帰属できた。この体積変化に帰属できる相は、変性剤存在下で修飾apoPCに光を照射した場合や、apoPCと同様の方法で修飾したモデルペプチド(N-acetyl-Asp-Gly-Cys)に光を照射した場合には観測されなかった。3.ApoPCのフォールディング反応における蛋白質と水分子の相互作用:修飾apoPCへ光照射後、23msのタイムスケールで拡散定数が増大することが、過渡回折格子法により解った。この変化は、蛋白質と水分子の分子間水素結合が、蛋白質内の分子内水素結合へと変化したことに対応すると解釈した。
すべて 2005
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Biochemistry 44・30
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