研究課題
アミロイド線維形成反応は、水溶液中で進行する蛋白質の不活性化会合現象の一つである。この会合体は、不定形のアモルファス凝集と異なり、幅数十ナノメータのβシート構造からなる細線維を形成する。アミロイド線維の形成機構を研究することは、水溶液中での真の蛋白質の構造・物性、並びに病気との関係を理解する上で重要である。ここでは、非病原性アミロイド線維を形成するβラクトグロブリンを用い以下の成果を得た。1.アミノ酸配列の物理化学的特性やその動力学的性質とアミロイド線維形成機構の関係について調べることを目的として、以下の実験を行った。まず、βラクトグロブリン由来の様々なペプチドを調製し、そのアミロイド線維形成傾向について調べた。その結果、比較的高い疎水性度を持つ天然状態でA,G,Hストランドに相当するペプチドにおいて、アミロイド線維が形成されることが分かった。しかしながら、それ以外の疎水性度の比較的低いペプチド断片では、凝集体形成傾向も低かった。2.Aストランド由来のペプチドから作られたアミロイド線維をβラクトグロブリンが入った溶液中に添加することで、蛋白質全体のアミロイド線維形成が促進された(クロスシーディング効果)。これにより、Aストランドに相当する配列領域がβラクトグロブリンのアミロイド線維形成に直接、関与していることが示唆された。2.アミロイド線維を形成したβラクトグロブリンを含む溶液中にリジン側鎖を特異的に修飾するFITC蛍光色素を添加し、個々のリジン残基の溶媒露出度を調べた。修飾されたリジン残基はアミロイド線維内において、溶媒に露出していると考えられる。現在、トリプシン分解と蛍光分光ならびに質量分析によって、蛍光修飾されたリジン残基の位置を同定している。概ね、上記1,2と整合性のとれる結果が得れられている。来年度においては、個々のリジン残基の化学修飾の速度などについても検討する。
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