研究概要 |
申請者らは最近,マクロファージや樹状細胞,顆粒球,肥満細胞などに発現する新しいペア型免疫グロブリン様受容体遺伝子群MAIR-I, MAIR-IIを同定した(J Exp Med,2003)。MAIR-IとMAIR-IIの細胞外領域は互いに90%程度の相同性を示すが、MAIR-Iは細胞内領域にITIMを有し、SHIPを介して抑制性シグナルを伝え、IgE結合によって惹起される肥満細胞からの脱顆粒反応を抑制した。一方、MAIR-IIはDAP12と会合し、マクロファージからの炎症性サイトカインの分泌を亢進させた。これら正と負の受容体がどのようにリガンドを認識し、どのような免疫応答を決定するかを明らかにするためには、これらのリガンドをそれぞれ同定することが必須である。本研究ではMAIR-I, MAIR-IIが認識するリガンドをそれぞれ同定し、それらとMAIR受容体との結合による免疫応答の様式を明らかにすることを試みた。そのため、MAIR-I, MAIR-IIの細胞外領域にIgGFc部分を結合させたキメラ蛋白を作製した。これを用いて、それぞれのリガンドを発現する細胞をスクリーニングし、すでにいくつかの発現する細胞株を同定した。さらにそれらの細胞株のうちリガンドを最も多く発現していると思われたEL4細胞株からレトロウイルスベクターを用いて発現クローニングのためのcDNAライブラリーを作製した。一方、肥満細胞におけるMAIR-Iの抑制シグナル伝達にはIgE受容体との共佳境が必要であることを明らかにした。
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