機能的な記憶T細胞の分化維持機構を明らかにする目的で、記憶CD8T細胞の分化を正に制御しているBc16の役割を中心に解析した。 1 記憶CD8T細胞分化におけるBcl6の役割とその標的遺伝子の解析 感染モデルを用いた実験から、Bcl6は二次応答に重要なcentral memoryCD8T細胞の機能維持に重要であることを明らかにした。さらに、グランザイムBが活性化CD8T細胞におけるBcl6の標的遺伝子の1つであることを明らかにした。その分子機序として、グランザイムBのプロモータ活性をBcl6がピストン脱アセチル化酵素を誘導することで負に制御すること、Bcl6とSTATとの同部位に対する競合が存在することが示唆された。グランザイムBは感染微生物の排除に中心的に働くが、これらを産生する活性化リンパ球そのものの細胞死をも誘導し、免疫応答にも影響することが報告されている。Bcl6は活性化CD8T細胞のグランザイムBの発現を調節することで長期の免疫応答の調節にも関わっている可能性が示唆された。 2 記憶CD4T細胞分化におけるBcl6の機能解析 獲得免疫の質の調節、長期維持にはCD4T細胞が深く関与しているが、記憶CD4T細胞の分化維持におけるBcl6の役割に関しては明らかにされていない。本研究では抗原特異的記憶CD4T細胞誘導過程におけるBcl6の機能をDO11.10背景のBcl6-KOマウスを用い免疫実験で評価した。その結果Bc16-KO由来CD4T細胞は野性型と違い長期維持されなかった。Bcl6-KO由来CD4T細胞はエフェクターCD4T細胞には分化するが、維持過程において記憶CD4T細胞前駆細胞を含むとされるIFN-γ非産生細胞が減少していくことから、Bcl6はIFN-γ非産生細胞の生存維持に必要であることが明らかになった。
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