体内に侵入した病原体に対して活性化された成熟B細胞は、抗体産生細胞やメモリーB細胞に分化する。病原体による再刺激により、メモリーB細胞はきわめて迅速にIgGやIgEクラスの大量の高親和性抗体を産生する抗体産生細胞に分化する。しかし、2次免疫後、きわめて迅速かつ大量に特異抗体が産生される分子機構は不明である。CD22は共受容体としてIgMを含むBCR(IgM-BCR)やIgD-BCRシグナルを負に制御するが、IgG-BCRシグナルを負に制御しないことから、IgG陽性細胞はIgM/IgD陽性ナイーブB細胞に比べ活性化しやすいと考えられる。 そこで本研究ではIgG陽性メモリーB細胞が2次免疫により迅速かつ多量のIgG抗体産生を誘導する分子機構解明を目的とし、CD22による制御の有無によりIgG陽性細胞がIgM/IgD陽性ナイーブB細胞より活性化されやすいかを詳細に検討するために、ニトロフェノール抗原特異的な可変領域を持つμあるいはγIgH鎖遺伝子を導入したIgMあるいはIgGトランスジェニック(Tg)マウスを作製した。フローサイトメーターによりそれぞれのIgH鎖遺伝子の発現を確認した。現在さらにCD22欠損マウスと交配中である。 IgGとは異なるエフェクター活性化能を持つIgEやIgAについても、同一抗原特異性を持ったそれぞれのクラスのIg-BCR細胞を構築し、CD22による制御の有無を検討した。その結果、IgE-BCRはIgG-BCRと同様にCD22の負の制御を受けにくいが、IgA-BCRはIgM-BCRと同様にCD22による負の制御を受けることが明らかとなった。
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