本研究では、DOCK2、DOCK180といったCDMファミリー分子に焦点をあて、各種受容体刺激から細胞骨格再構築に至るシグナル伝達系を解明し、免疫系の発生、分化、構築や機能発現における各シグナル伝達分子の役割を明らかにすると共に、その理解に立脚して、免疫監視システムという時間的にも空間的にも巧妙に制御された精緻なシステムの意義を個体レベルで検証することを目的としている。このため本年度は、DOCK2欠損T細胞と血管内皮細胞との相互作用をタイムラプスビデオイメージングを用いて解析し、DOCK2がtransendothelial migrationには必要ではないが、血管内皮細胞上での移動(lateral motility)に重要な役割を演じることを明らかにした。また、DOCK2がT細胞のリンパ節への移入のみならず、リンパ節内での運動やリンパ節からの移出をも制御することを、多光子共焦点レーザー顕微鏡を用いて明らかにすると共に、DOCK2遺伝子の最終エクソン直下にGFPをコードする遺伝子を挿入したノックインマウスを作製し、極めて生理的な条件下でDOCK2動態のダイナミズムを可視化できる実験系を新たに構築した。さらに、遺伝子改変マウスを作製することでDOCK180の生理的機能の一端を解明すると同時に、赤痢菌が細胞内に侵入する際に、ELMO-DOCK180というシグナルカスケードをハイジャックしていることを示した。
|