免疫監視システムは「自己」と「非自己」を識別し、非自己成分(微生物、変異タンパク質)をすみやかに生体より排除し、その恒常性を維持するために構築されたシステムである。免疫系が真に生体にとって有益な監視システムとして機能するには、免疫系独自に進化した細胞高次機能の存が不可欠である。例えば、外来異物やアポトーシス細胞の貧食、リンパ球やマクロファージの遊走、抗原認識といった細胞高次機能は免疫監視システムの根幹をなすものであり、いずれにおいても細胞骨格の再構築が重要な意味を持つと考えられているが、その分子レベルでの理解は進んでいない。 CDMファミリーは線虫から哺乳類に至るまで保存された分子群で、低分子量GTP結合蛋白質の上流で機能することで細胞骨格の制御に関わっている。本研究では、DOCK2、DOCK180といったCDMファミリー分子に焦点をあて、免疫監視システムにおける意義を検討し、1)DOCK2がT細胞受容体(TCR)の下流で機能するRac活性化分子であり、免疫シナプス形成において、TCR及びリピッドラフトの集積を選択的に制御すること、2)DOCK2がRacを活性化するには、ELMO1との介合が重要であること、3)同じリンパ球でもT細胞とB細胞では、ホーミングの制御機構が異なること、4)DOCK2が胸腺内分化過程において、TCRの抗原認識を介してNKT細胞の分化を制御していること、5)DOCK2欠損によりアロ移植片の長期生着が可能になること、6)D0CK2が好中球の遊走や活性酸素産生に不可欠なRac活性化分子であることを明らかにした。
|