研究概要 |
我々はSOCS1欠損マウスのT細胞とB細胞にSOCS1の発現を回復させることによって長期生存が可能になることを確認した。しかしこのマウスは生後8週ごろより皮膚炎や糸球体腎炎を呈し、自己抗体が上昇し、自己免疫疾患を発症した。さらに詳細に検討すると、過剰に活性化した樹状細胞がその病態に強く関与していることがわかった。SOCS1を欠損した樹状細胞はT細胞の増殖を増強し、さらにIFNγを代表とするTh1型のサイトカイン産生を促す。SOCS1の欠損は樹状細胞に大きな変化を与え、免疫監視機構の破綻を引き起こしている可能性が考えられる。我々はさらに今回SOCS1欠損樹状細胞は効果的な抗腫瘍免疫を誘導できることを示した。その分子機構として最近CD4,CD8T細胞からのIFNγ産生が抗腫瘍効果と相関することが報告されている。そこでSOCS1欠損樹状細胞によるT細胞からのIFNγ産生を比較したところ野生型に比べてSOCS1欠損樹状細胞がはるかに強いIFNγ産生誘導活性があることがわかった。マイクロアレイにて、SOCS1欠損型樹状細胞に強く発現する分子を検索したところ多くはIFN誘導遺伝子であった。そこでSTAT1の活性化を比較したところ、SOCS1欠損樹状細胞では恒常的にSTAT1が活性化されておりLPSなどの刺激によってさらに増強された。SOCS1欠損樹状細胞はSTAT1を介してT細胞にIFNγ産生を誘導する何らかの因子を発現していると考えられる。現在マイクロアレイで得られた分子について解析を行っている。。これらの知見からSOCS1遺伝子の発現や機能を制御することで自己免疫疾患の制御やがん免疫療法の増強方法を開発できる可能性が示唆される。
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