我々はこれまでに、食細胞による死細胞の貧食に関与する分子としてMFG-E8を同定した。そしてMFG-E8欠損マウスを作製し解析することにより、MFG-E8が脾臓、リンパ節の胚中心において不要なB細胞を排除する働きを担うTingible Body Macrophage (TBM)による死細胞の負食に重要な役割を果たしており、この細胞の当該機能異常が抗核抗体や抗DNA抗体等の自己抗体の産生を引き起こすことが明らかになった。このことは死細胞貧食が自己に対する免疫寛容の維持に重要な役割を果たしていることを示唆するものである。我々は死細胞貧食の異常と自己抗体産生の関連についてさらに検討する目的で、多くの種類の食細胞による死細胞の貧食を阻害する作用を持つMFG-E8のRGD配列変異導入リコンビナントタンパクを大量に作製し、この変異タンパクを野生型マウスに投与し、自己抗体の産生が誘導されるかどうか検討した。この変異蛋白を経静脈的にC57BL/6マウスに投与すると、用量依存的に抗リン脂質抗体や抗核抗体が産生されたが、死細胞の貧食を阻害する作用を持たないE1E2PT変異蛋白を投与しても全く自己抗体が産生されなかった。さらにこのMFG-E8のRGD配列変異導入タンパク投与による自己抗体の産生は、ex-vivoでアポトーシスを誘導した死細胞を同時に投与することによりその抗体価が上昇することから、変異タンパクの投与が食細胞による死細胞の処理を遅延させ、その結果、自己抗体産生が誘導されることが分かった。
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