エスコートに分類される輸送関連Hrsの機能解析を行う目的でHrs欠損マウス由来不死化細胞株を調整した。EGF受容体の分解と細胞内コンパートメント動態を検討した。cycloheximide存在下においてタンパク分解の時間経過を観察したところ、Hrs欠損細胞において受容体分解が有意に遅延しシグナル伝達の継続時間の延長が認められた。細胞内コンパートメント動態を検討したところEEA1陽性の巨大エンドソーム形成を認めた。この異常構造の出現にはHrsの細胞内ドメインのうちユビキチン結合およびPIP3結合ドメインのいずれも必要であった。Hrs欠損細胞における積荷タンパク(カーゴ)の分解異常の有無を検討する過程において、Hrs結合蛋白STAM1およびSTAM2がHrs欠損下ではほぼ完全に分解されていた。この原因としてライソソームあるいはプロテアソーム依存性分解のいずれが関与しているか検討した結果、STAMはプロテアソーム依存性に分解されており、STAMはポリユビキチン修飾を受けユビキチン化酵素の標的となっていた。さらにSTAMの分子内ドメインと分解の相関を検討したところ、UIMドメインの存在がSTAMのプロアソーム依存性分解に必須であった。したがってSTAMのUIMはカーゴの認識のみならず、STAM自身のユビキチン依存性分解を制御していることが明らかとなった。STAMの発現と細胞内ユビキチン化蛋白に何らかの関連がないか調べた結果、Hrs欠損細胞においては細胞内ユビキチン化蛋白の総量が低下しているのに対し、Hrs戻し細胞においては細胞内ユビキチン化タンパクの蓄積が観察された。以上の結果から、Hrsはエンドソームの形態維持に必須であるのみならず細胞内ユビキチン化蛋白、特にカーゴの運命決定に密接に関与していることが示唆された。
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