エキソサイトーシスは、特定の細胞表層領域へ受容体や細胞極性因子を局在化させることで、細胞の時空間的情報を制御する役割を担う。この働きは、細胞の極性成長や分裂に不可欠であると考えられる。このようなエキソサイトーシスの素過程の分子機構を解明するために、本研究では、細胞の形体形成や細胞質分裂のしくみが最もよく分かっている分裂酵母Schizosaccharomyce pombeを研究対象にした。最初に、小胞の輸送の過程を追跡するために、分泌小胞の制御に必須なRab GTPase(Ypt2)の細胞内挙動をエバネッセンス顕微鏡とニポウディスク型共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。その結果、細胞の成長端や分裂面などの細胞表層におけるYpt2の運動を捉えることができた。また、Ypt2の局在化には、微小管は不要で、アクチン細胞骨格が不可欠であった。さらに、この輸送系には、アクチン重合タンパク質For3とV型ミオシンMyo4が関わることが分かった。For3の活性はRho GTPaseの制御下にある。そこで、分裂酵母の新規Rho5を同定し、機能解析を行った(研究成果参照)。また、Ypt2の活性制御に関与するGAPを単離した。この遺伝子は細胞増殖に必須ではないが、アクチンケーブルの形成に関与することが分かった。次に、小胞の分泌が特定の領域で生じるしくみを解明するため、細胞極性の維持に必須なPob1とエキソシストの機能について検討した。これらには遺伝学的な正の相関があり、細胞内局在性も部分的に一致した。Pob1のドメイン解析を行った結果、エキソシストの細胞内局在性の制御に必要な領域を同定することに成功した。また、興味深いことにPob1の活性損失により、細胞内のアクチンケーブルが消失することが分かった。この時、細胞内のFor3の局在が散在することから、Pob1には小胞の融合部位と輸送経路をリンクする機能をもつ可能性が示唆された。
|