研究課題
分泌蛋白、膜蛋白は小胞体で成熟し細胞内に分泌輸送されて機能を発現する。虚血、低酸素、毒物や蛋白の一次構造の変異などにより異常蛋白が小胞体に集積すると小胞体ストレス反応が起こり、異常な蛋白は分解処理される。我々はKDEL受容体が、ゴルジ体から小胞体への逆輸送を担うCOPI小胞輸送の制御機構であると共に、小胞体quality control機構の重要な要素でもあることを培養細胞で示して来た。そこで、KDEL受容体による逆行性輸送が制限された、変異KDEL受容体発現トランスジェニックマウスを作製した所、驚くべきことに、生後10数週を経て拡張型心筋症による心不全が発症した。本研究では変異KDEL受容体トランスジェニックマウスを用い、その心臓、心筋細胞を生理学的、形態学的、生化学的に解析し、拡張型心筋症発症に至る分子機構を明らかにしようとしている。また、マウス大動脈を縮窄し心臓に圧負荷をかけた状態での検討も行っている。こうした検討はメンブレントラフィックの破綻による心筋症や心不全、あるいは心筋細胞死発症の分子機構の解明に繋がると同時に、KDEL受容体による逆行性輸送によるquality controlを制御することによる疾患の予防、治療法の開発へと発展すると考えている。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (2件)
Biochem Biophys Res Commun. 320
ページ: 766-772
Mol Cell Biol. 24
ページ: 8007-8017