1.シナーフィンの作用機構 (1)私たちはすでにサイトゾルタンパク質シナーフィン(別名コンプレキシン)が神経伝達物質の放出に重要であることを証明している。本研究ではその作用機序と放出過程における作用のタイミングの解明を目指している。組換えシナーフィンの突然変異体を作製し、SNARE複合体への結合に関与する残基の同定を試みた。結合に重要と考えられるシナーフィン分子中央部分に限定した。グルタチオンーセファローズに固定してこれらの変異体のGST融合タンパク質に脳膜分画抽出物をかけ、結合したSNAREをイムノブロットで検出した。その結果、野性型に比較して、I66T、R67A、K69AおよびY70Sはいずれも結合活性が著しく減少していた。したがってこれらの残基はいずれもSNARE複合体との結合に重要であると考えられる。 (2)私たちは以前の研究によって、この部分のペプチドがSNARE間の相互作用には全く影響せず、シナーフィンの特異的アンタゴニストとして働き、神経伝達物質の放出を抑制することを見いだしてる。現在、この部分のcagedペプチドをイカ巨大シナプス前末端に注入後、紫外線のパルス照射によってこのペプチドを活性し、神経伝達物質放出の抑制の時間経過を追究することにより、シナーフィンの作用速度を解析している。 2.Munc18-1およびトモシン遺伝子欠損マウスの作製 Munc18-1(別名nSec1))およびトモシンはともにサイトゾルタンパク質で、神経伝達物質放出に密接に関与すると考えられるが、その作用機序は未だ確立されていない。本研究では両タンパク質の機能を解明するため、Cre/lox系を使ってこれらタンパク質の遺伝子の脳部位特異的欠損マウスの作製を試みている。現在、相同組換えを起こしたES細胞のスクリーニングを行っている。
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