研究概要 |
脂質滴はほとんどの細胞に見られる構造であり,中性脂質の集積する核心部分(コア)と特異な脂肪酸組成を示す燐脂質一重層からなる表層からできている.脂質滴の機能を明らかにする目的で,精製した脂質滴成分を質量分析装置で解析し,60以上の蛋白質を同定した.その中に含まれたRab蛋白質のうち,Rab18について解析した. Rab18は脂質滴周囲に局在し,細胞内の他の部分にはほとんど見られなかった.脂質滴のマーカー蛋白質であるADRPとの二重標識により,両者は脂質滴表層に共存するが,その標識強度は相補的であった.EGFP-Rab18を強制発現させると,導入分子が発現した脂質滴でのみADRPの標識強度が低下し,Rab18はADRPを排除することが示された.EGFP-Rab18を発現した細胞を電顕観察すると,小胞体またはその延長部分が脂質滴と密着する構造が高頻度で観察された.ADRPをRNA干渉法で発現抑制した細胞,およびBrefeldin A処理でADRPを脂質滴表層から脱落させた細胞でも同様の密着構造が見られ,いずれの場合も対照群に比較して有意の差が認められた. これらの結果はGTP結合蛋白質であるRab18が脂質滴表層に結合する性質を持ち,さらにADRPを排除することで小胞体と脂質滴の密着構造形成を誘導することを示す.小胞体との密着構造はミトコンドリアや細胞膜でも観察され,いずれも膜間の脂質移動に関係すると考えられている.Rab18が誘導した小胞体・脂質滴間の密着構造についても同様の機能を持つ可能性があり,さらなる検討を行っている.
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