研究概要 |
メラノソームは、メラニンを合成および保有する唯一の細胞内小器官であり、形態学的にも、機能的にも独特の特徴を有している。我々は、皮膚科医として、眼皮膚白皮症(oculocutaneous albinism, OCA)、あるいはOCAに出血傾向や間質性肺炎などが合併するHermansky-Pudlak症候群(HPS)などのMulti-organellar disordersの研究を通して、メラニン合成およびメラノソームの生合成およびその制御機構を解析してきた。これまでに、HPS4/light ear遺伝子産物は、HPS1遺伝子産物とともにBLOC3を形成し、メラノソームのメンブレントラフィックに関わっていることを報告したが、これらの分子はお互いには直接相互作用しておらず、さらに第3の分子の存在が疑われた。OCA4遺伝子産物についてもモデルマウスの解析より、細胞内において複合体を形成していると考えられているが、詳細は全く不明である。我々は、HPS4遺伝子産物に対する抗体の作成に成功し、ウエスタンブロットにて、HPS4タンパクのモニタリングが可能となった。それを使用して、HPS1モデルマウス培養細胞では、HPS1分子のみならずHPS4分子も消失していること、HPS1分子を代償的に発現させると、HPS4分子も回復することが証明できた。これは新知見である。現在、BLOC3の構成分子について精製中であり、100倍くらいまでは生成できた。臨床的アプローチとしては、OCAとHPSの症例の蓄積に努めた。その結果、10症例のHPS患者を新しく遺伝診断した。今後これらの症例の表現系、つまり患者の症状の関係を検討する。また、75例の日本人眼皮膚白皮症患者の遺伝子スクリーニングをしたところ、18例のOCA4型症例を見つかった。そこで、これらの症例の臨床症状の特徴を調べ、詳細な臨床症状と変異型を比較検討した結果、同じ遺伝子の変異でありながら変異の場所により、臨床症状はかなり異なることが判明した。
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