研究概要 |
種子貯蔵タンパク質は液胞タンパク質の一種であり,種子細胞のタンパク質蓄積型液胞に存在している.小胞体で合成された貯蔵タンパク質前駆体はメンブレントラフィックにより液胞まで輸送され成熟化する.大量に合成される貯蔵タンパク質は植物の液胞タンパク質の輸送機構を解析する好いモデル系である.本年度は貯蔵タンパク質の生合成に異常を示すシロイヌナズナ変異体の解析を行った.貯蔵タンパク質に対する特異抗体を用いたイムノブロティングにより,約28,000のT-DNAタグラインから貯蔵タンパク質の前駆体を異常に蓄積するラインを8ライン取得した.前駆体を蓄積する変異体は輸送過程に何らかの異常が起きていると考えられる.免疫電子顕微鏡観察の結果,A06変異体は一部の貯蔵タンパク質が細胞外に分泌されていた.これは選別輸送レセプターAtVSR1のノックアウト変異体と同一の表現型であり,A06変異体の原因遺伝子がAtVSR1の関与する輸送経路で機能している可能性を示唆している.また,A02及びA03変異体は共通の表現型を示し,貯蔵タンパク質の分泌は認められないが,細胞内に小胞体由来であると考えられる異常な構造体が形成されていた.これはメンブレントラフィックの初期に欠損があるためと考えられた.一部の変異体については原因遺伝子の特定を行い,分裂酵母の液胞タンパク質輸送に関る因子と相同性が見られた.さらに,これらの遺伝子産物と相互作用すると予測される因子のノックアウト変異体を解析した.一部の変異体については予測通りに貯蔵タンパク質の輸送異常が観察された.
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