研究概要 |
本研究は分裂酵母モデル生物を用いた分子遺伝学的手法により、Ca2+カルモヂュリン依存性タンパク質脱リン酸化酵素であるカルシニューリン、あるいはカルシウムにより活性化されるCキナーゼなどに焦点をあて、これらの分子を介するシグナル伝達機構と細胞内輸送の関連を解明しようとするものである。 細胞増殖にカルシニューリン活性を必須とする変異株は免疫抑制薬に対して感受性を示すことに着目し、現在までに15種類の異なる遺伝子座位の変異体を取得している。これらの変異体の原因遺伝子として低分子量Gタンパク質であるRab/Ypt3,クラスリンAP-1複合体のサブユニットの一つであるmu-adaptinなどを同定してきた。 本年度は新たな変異体の原因遺伝子として低分子量Gタンパク質Rabファミリーに属するRyh1とAP-1複合体のsmall subunit, large subunitをコードする遺伝子を同定し、細胞内輸送に関わる機能解析を行った。GFP-Ryh1はGolgi/endosomeと考えられる点状の局在を示すが、dominant active型のRyh1は細胞表面に局在にした。さらにryh1の変異体ではシナプトブレビンのrecycleの異常に加えてacid phosphataseの分泌に異常があることが明らかとなった。これらの結果からRyh1は出芽酵母のYkt6のホモログと考えられるが、従来提唱されているようなGolgi-ERのリサイクリングの機能のみならず、Golgi-plasma membraneに至る分泌の過程においても機能していることを明らかにした。また、Aps1(small subunit), Apl1(large subunit)のノックアウト細胞も既に同定したApm1(medium subunit)と同様にゴルジにおける輸送の異常が確認された。
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