研究課題
構造・機能研究:シナプス小胞型グルタミン酸輸送体(vesicular glutamate transporter 2,VGLUT2)の昆虫細胞を用いた大量発現・精製系を構築し、トランスポーターの高純度精製品を得た。これを用いて結晶化を試みている。VGLUT2の各部位に対する特異抗体を調製し、これを用いて膜内トポロジーを決定した(投稿中)。VGLUTは膜電位依存性にグルタミン酸を輸送する一方、Na^+と無機リン酸をグルタミン酸と逆方向に輸送する。このいわゆる基質と共役イオンと輸送の方向性に関する多芸性を支えるアミノ酸残基をアミノ酸置換法とCOS細胞ならびにカエル卵の発現系を用い解析している。グルタミン酸輸送活性が低下するアミノ酸残基を一つ同定した。生理的意義に関する研究:VGLUTsがCNS以外に複数の末梢組織(特に内分泌細胞と精原細胞)に発現していることを見出した。特に膵臓のランゲルハンス氏島においてはVGLUTがグルカゴン顆粒に存在し機能していることを実証した。すなわち、ラ氏島においては、グルタミン酸がグルカゴンとともにα細胞より分泌され血糖調節ホルモンの分泌の重要な制御因子となっている。その他の細胞に発現しているVGLUTも機能的であり、グルタミン酸による細胞間のシグナル伝達が神経以外の細胞にも見られる普遍性の高い機構であることを実証しつつある。ラ氏島β細胞におけるVGLUT2ノックインマウスの解析も進めている。
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