本研究は、細胞膜に加えtrans-Golgi network(TGN)あるいはリサイクリングエンドソームのラフトに局在し、N末端の疎水性アミノ酸領域とC末端に付加されたGPIの2ケ所で膜に結合するユニークなトポロジーを有する蛋白質、BST2、のラフト局在化機構及びエンドサイトーシス機構の解析を通して、細胞膜からTGNあるいはリサイクリングエンドソームへのラフトを介したメンブレントラフィックの分子制御機構を解明することを目的としている。 BST2は、HeLa細胞を含む種々のヒト由来癌細胞に発現し、その局在は細胞膜とTGNあるいはリサイクリングエンドソームであった。さらに、これら全てのコンパートメントにおいて、BST2はTritonX-100不溶性画分、所謂ラフトに存在し、これらコンパートメント間をリサイクルしていることが判明した。このようなラフト局在性からBST2の細胞膜からのエンドサイトーシスはクラスリン非依存性の可能性が予測されたが、BST2の細胞膜からのエンドサイトーシスはダイナミンのドミナントネガティブ変異体の発現及びK^+-depletionにより阻害され、BST2はクラスリン依存的な機構によりエンドサイトーシスされることが示唆された。さらに、BST2の様々な変異体を安定発現させたNRK細胞を構築し、BST2の局在及びエンドサイトーシスに必要な領域を検討した結果、GPI領域はラフトへの局在化には必要であったが、BST2の細胞内局在及び動態には必要ではなく、N末端細胞質領域、特に6番目と8番目のチロシン残基がエンドサイトーシスに必要であることが判明した。また、両チロシン残基のエンドサイトーシスシグナルとしての重要性は、Yeast two-hybrid法によるAP-2のμ2サブユニットとの結合に必要であったという結果からも明らかとなった。このように、BST2は一般的なTyrosine-based motif(YXXΦ)とは異なる新たなエンドサイトーシスシグナルを介して細胞膜からクラスリン依存性の機構によりエンドサイトーシスされることが判明した。
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