研究概要 |
膵β細胞内insulin顆粒の貯蔵からフュージョンまでの細胞内トラフィックを詳細に研究する手法として,入射角可変式全反射顕微鏡(V-TIRFM)を新規開発し、分泌顆粒の時間空間的動態解析を行った(Proc.SPIE, 2006)。V-TIRFMは従来のTIRF顕微鏡とは異なりエバネッセント場を任意に調節することができるため、カバーガラス上の細胞の形質膜近傍から細胞質内部までの蛍光変化を任意の厚さで高空間分解能で観察可能な顕微鏡である。この新規開発したV-TIRFMを用いて、insulin-GFPを初代培養膵β細胞に発現させることで特異的に標識したinsulin顆粒の貯蔵からフュージョンまでの細胞内動態を観察し、単一顆粒レベルで画像解析した。β細胞内のインスリン顆粒の貯蔵状態を調べたところ,細胞には形質膜上にドッキングしている顆粒のプールと、形質膜より約500nm内部に存在する細胞質内顆粒プールの少なくとも2つの顆粒の貯蔵プールが存在していた。高グルコース刺激下での分泌第1相に相当する刺激後5分以内のinsulin分泌では、前者の形質膜上貯蔵プールよりの顆粒のフュージョンが選択的に観察された。一方,刺激後5分以降のinsulin分泌第2相では、後者の細胞質内貯蔵プールより形質膜に選択的に供給され、非常に短時間(<50ms)dockingした顆粒のフュージョンが観察された。なお、この細胞質内貯蔵プールは細胞骨格系蛋白質、とくにアクチンによって調節されており、その調節分子機構を現在検討している。このように新規V-TIRFMを用いて、2相性insulin分泌を担っている顆粒の細胞内貯蔵プール及びフュージョンまでの細胞内トラフィックの実態を初めて明らかにすることができた。
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