分泌系タンパク質は小胞体(ER)で合成され、微小管上を移動する輸送小胞によってゴルジ体へと運ばれた後に最終目的地へと向う。小胞体上にはER exit site(ERES)と呼ばれるサブドメインが存在し、そこでゴルジ体へのタンパク質輸送(順行輸送)を司るCOPII小胞が形成される。順行輸送に伴ってゴルジ体へと輸送された膜タンパク質の一部は逆行輸送によって小胞体へともどされ、再利用される。小胞体における膜融合はsyntaxin18(Syn18)複合体によって媒介されると考えられている。 Syn18複合体:Syn18複合体は、膜内在性サブユニットのSyn18、BNIP1、p31、Sec22bと、膜表在性サブユニットのZW10、RINT-1、Sly1pなどから成る。本年度は、RINT-1がZW10(微小管のモーターであるダイニン-ダイナクチンと相互作用するタンパク質)を小胞体上のSyn18につなぎ止める役割を持つことを示した。また、RINT-1がZW10と同様に小胞体からゴルジ体への順行輸送に直接的に関与することを明らかにした。 COPII小胞の形成機構:p125はCOPII小胞のコート成分であるSec23pと結合するタンパク質として同定されていたが、本年度はRNAi法を用いてp125がERESの構築に関与していることを明らかにした。ERESの構造が乱されると、ゴルジ体の構造も変化したが、VSV-Gタンパク質の輸送には影響が見られなかった。 酵母Sec16pはCOPII小胞形成に重要な因子であるが、今までその動物オルソログは発見されていなかった。Sec23p結合樹脂を用いてアフィニティ精製された250kDaタンパク質(p250)の部分配列を決定したところ、弱いながらも酵母Sec16pと構造類似性を有するタンパク質であることが判明した。現在その機能を解析している。
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