細胞間接着分子であるE-カドヘリンは上皮細胞の運動性制御および極性形成において重要な役割を果たし、その転写、翻訳後修飾ならびにメンブレントラフィックによる制御機構に興味が持たれる。本研究ではE-カドヘリンのトラフィックを調節する低分子量Gタンパク質Arf6の活性制御機構の解明が上皮細胞の運動性制御および極性形成の理解に大きく寄与すると考え、まずマウス乳腺上皮細胞(NMuMG細胞)を用い、活性型Arf6(Arf6Q67L)および不活性化型Arf6(Arf6T27N)をそれぞれ安定に発現する細胞株を樹立した。その結果、活性型Arf6の発現により、E-カドヘリンの細胞間接着部位からの消失、上皮様から繊維芽細胞様への形態変化および細胞運動能の亢進が観察された。反対に不活性化型Arf6の発現によりE-カドヘリンの細胞間接着部位への集積、より上皮化した形態および低い細胞運動能が観察された。またレンチウイルスベクターを用い、Arf6のshRNAによる発現抑制を行なったところ、不活性型Arf6を発現させた場合と同様な結果が得られた。さらに細胞間の接触が細胞内のArf6活性に与える影響をGGAアッセイ法を用い検討したところ、細胞密度とArf6活性は逆の相関性を示す事が明らかとなった。以上の結果は細胞間の接触によりArf6の活性を抑制し、さらにE-カドヘリンの細胞間接着部位への集積を促進する分子機構が存在する事を示唆するものと考えられ、今後その分子機構の同定を行なう予定である。
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