研究課題
嫌気性寄生性原虫赤痢アメーバは微生物や宿主細胞を貪食し、貪食胞による分解で栄養素を得ている。また、大腸の粘膜から組織侵入をする際には病原性因子であるシステインプロテアーゼなどの加水分解酵素を接触依存的に分泌することによって、組織融解・免疫細胞からの回避をしている。貪食・分泌に関わる分子機構を理解することは、赤痢アメーバの分裂・増殖と宿主への寄生に不可欠な生物機能を理解する上で不可欠である。我々はこれまで貪食胞での分解とリソソーム酵素の細胞内輸送に関与する低分子量GTP結合タンパク質Rab5,Rab7Aを中心に解析してきた。本研究では本原虫のもつRabの特殊性を明らかにし、進化の過程で選択された特異なRabの機能についての知見を得て、酵母・哺乳動物・植物などのRabの機能解析が進む他種の生物におけるRabの多様性・機能・調節機構の進化の過程についての知見を拡充することを目的とした。今年度行った我々ゲノムデータベースの作成とその解析の結果によれば、赤痢アメーバは単細胞真核生物としては例外的に、少なくとも90以上ものRab遺伝子をもつことが明らかとなった。これらのうち他種生物の特定のRabと40%以上のアミノ酸同一性を示すものは四分の一に過ぎず、残りの75%は赤痢アメーバに特異的に進化したRabであると予想された。多くのRabがサブグループを形成しており、特に、Rab7、Rab11、RabCなどは4-9種類のアイソタイプとして存在していた。赤痢アメーバにおけるRabの多様性と特殊性はこの生物におけるRabの生理的重要性と特殊な進化を強く示唆していた。我々は更にすべてのRab遺伝子、及び小胞輸送に関与するSNARE, adaptorなどすべての遺伝子群を網羅したDNAマイクロアレイの合成に関して、プローブデザインの最終段階に入り、次年度初頭の実用化を予定している。従って当初計画していた赤痢アメーバにおける病原機構と強く相関する遺伝子群の特定化のための準備は充分に整っている。
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