小胞輸送の多細胞個体レベルでの役割を明らかにするために、ショウジョウバエをモデル系に用いて解析をおこなった。まず、酵母や培養細胞を用いた先行実験より明らかにされてきた「小胞輸送に関与する分子」のショウジョウバエホモログをデータベースから検索しリスト化した。そのリストにある遺伝子について、ショウジョウバエ個体でRNAiによるノックダウンを誘導できる系統を作成した。それらの系統を用いて、ショウジョウバエの翅、眼、背中で各遺伝子をノックダウンし、どのような表現型が見られるかを詳細に観察した。特に翅には、翅脈・感覚器官・剛毛・微毛などの構造があり、それらが形成されるのに必要な情報伝達系などがわかっているので、翅の構造異常を詳細に観察することによって、小胞輸送がどのような情報伝達系の制御に関わっているかを大まかに推測することができる。そこで翅の表現型をもとに遺伝子を分類したところ、大きく5種類に分類することができた。その中で特に我々が注目しているのは、細胞の大きさが変化する表現型であった。というのも、細胞の大きさの制御には、Insulin-PI3K情報伝達系が関与していることがわかっているが、その情報伝達経路の制御に小胞輸送がどのように関与しているは明らかではなかったからである。 我々は、同定した新規遺伝子が本当にInsulin-PI3K情報伝達経路の制御に関与しているのか、もし関与しているとするならば、どのようなメカニズムかということを今後明らかにしていく予定である。
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