研究概要 |
発生段階でクロマチンドメイン・複製ドメインがいかに確立するかを調べる手法として、ES細胞に修飾ヌクレオチドを取り込ませ複製解析するシステムを確立し、複製起点間の距離等を解析中である。また、受精卵を体外培養する系で複製解析手法を確立中である。 マウスセントロメア領域、マイナーサテライトDNA(MS)およびメジャーサテライトDNA(MMS)のクロマチン構造のエピジェネティックな制御について複製との関係で解析した。マウスm5S胚性線維芽細胞株を5アザデオキシシチジン(azadC)処理した際のMS,MMS領域のヘテロクロマチン構造、修飾、複製タイミング、複製フォーク進行速度等について解析した。azadC処理によりMMS領域はヘテロクロマチン構造の崩壊が認められ、崩壊した領域が高アセチル化すること、ヘテロクロマチン結合タンパク質HP1□の結合が極めて少なくなることを見出した。MS領域は、セントロメア結合タンパク質CENPBの結合も変化なく、ヘテロクロマチン状態を維持していると推定した。次に核内複製フォーカスパターン(S期をI〜IVに分類)からそれぞれの複製タイミングを判定した。MMS領域はパターンII、MS領域はIIIの時期に複製するがazadC処理でヘテロクロマチン構造が崩壊した部分はパターンIに、MS領域はIIに複製する核の割合が増え、MS,MMS領域ともに複製タイミングが早まっていた。MS領域は、隣り合うMMS領域の複製タイミングの早まりに引きずられ早くなったものと推定した。さらに、複製フォークの進行速度を複製フォークの進行とMS,MMS領域をDNAファイバー上に同時検出するシステムを確立し、調べた結果、MMS領域のみ速くなっていた。これらの結果により、クロマチンのエピジェネティックな構造変換が複製タイミング、複製フォークの進行速度に大きく影響することを明らかにした。
|