研究課題
最近になって脂肪細胞から様々な生理活性物質が分泌されることが明らかになり、脂肪細胞由来の分泌因子が肥満による高血圧症の原因の一つである可能性が指摘されている。脂肪細胞は血圧上昇作用を有するアンジオテンシンIIを産生し、脂肪細胞におけるアンジオテンシンIIの産生はグルココルチコイドにより増加することが知られている。本研究では、新規生理活性ペプチド、アペリンの脂肪細胞における生理的役割を検討するため、マウス分離脂肪細胞及び脂肪細胞モデルの一つであるマウス3T3L1細胞におけるアペリンの遺伝子発現とその発現制御に関する研究を行った。結果として 1)マウス分離脂肪細胞および3T3L1細胞においてアペリンmRNAの発現が観察された。2)アペリンmRNAレベルは、3T3L1細胞の分化誘導後2日目から増加し、4-6日目には未分化細胞レベルの2倍に達したが、8日目から減少した。3)3T3L1脂肪細胞におけるアペリンmRNA発現は1-100nMのインスリン刺激により用量依存的に増加し、1nMでも65%の増加が認められた。この結果は、3T3L1脂肪細胞におけるアペリンmRNAの発現が生理的条件下でインスリン濃度に影響される可能性を示唆している。4)3T3L1脂肪細胞におけるアペリンmRNAの発現は、デキサメタゾン(0.1-100nM)の添加で用量依存的に抑制され、100nMで75%、1nMでも40%ほど抑制された。この結果は、3T3L1脂肪細胞におけるアペリンmRNAの発現が生理的グルココルチコイド濃度の変動によって影響される可能性を示唆している。これらの結果は、脂肪細胞においてアペリンmRNAの発現はインスリンおよびグルココルチコイドによって調節されていることを示唆し、ことに高グルココルチコイド濃度の条件下では脂肪細胞からのアペリン分泌が抑制される一方、アンジオテンシンIIの産生が増加するため、高血症などを惹起する可能性が指摘された。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (1件)
J.Biochem. 135
ページ: 605-613